貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

それでもなんとか花菜を立たせることに成功し、抱きかかえるようにして向かった先は、塗籠(ぬりごめ)という壁に仕切られた畳敷きの部屋だ。
中には火鉢もあり、とても暖かい。

「さあ、ここなら暖かいから」

「……はい」

そこに来ても花菜の涙は止まらず、しくしくと泣き続けた。

いつの間にか月君はその場を離れたのだろうか。
花菜の手をとった彼は、どこから用意したのか茶碗を握らせる。

「好きなんだろう? 甘酒」

「あり、ヒック、がと、ヒック、ござい、ます」

「あーもう、いいから飲め。体が温まるから」

両方の手で茶碗を包んでいると、甘酒の温もりが茶碗を伝い、冷えた指先を温めた。

そして――。
ひとくち、ふたくちと甘酒を飲むうち、涙は流れることを止め、凍えていた胸の中も少しずつ温められていく。