貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

いざとなれば表の着物を脱ぎ捨て、池に飛び降りて逃げよう。薄氷が張っている池はさぞかし冷たいだろうが仕方がない。
そう心に誓うが、それでも体は恐怖のあまり震え足が動かない。

「お、お止めください! 人を呼びますよ!」
そう声を出すのが精一杯だった。

どうしようと思ったその時、

ふいに、ドスッと大きな音がした。

「うわっ」

見れば男の衣を弓矢が貫いている。

一体どこから飛んで来たのか?

驚いた男が花菜を睨む。

「おぬし、術でも使うのか」

「そういやこの女、狐憑きやいう噂の藤盛の娘だ。父親も物の怪だというし」

藤盛の、と言われた途端、花菜の心の中で怒りが恐怖を押しつぶした。

「――ばかにしないで! なにが物の怪よっ!」
怒りのまま思い切り股間を蹴りあげた時、
「何をしている!」
現れたのは。

――頭中将?
ではなく、

カイ?
でもなく……。