貧乏姫でもいいですか?(+おまけ)

――泣くのはこれで最後にしよう。
そう思いながら、花菜は涙を流した。

耐えていた辛さが悔しさも、涙と一緒に込み上げてくる。

『姫さま、荊の道ですぞ』
嗣爺に言われた通りだった。

わかっていた事だ。

馬鹿にされることも、辛い思いをすることも。でも、貧乏だからって何が悪いって言うの?
誰にも迷惑をかけていないじゃない。

悔しかったら、私より上手に着物をしあげればいいし、私より美味しい料理を作ればいいじゃないの。どうして、人を蹴落とすことしか考えないの?

月に訴えたところで、答えは返ってこない。

でも、泣き言はこれが最初で最後だからと、唇を噛んで月を見上げた。

どれくらいそこでそうしていただろうか。

見上げた月が、涙で歪む。
枯れ果てることなく頬を伝う涙が、袖を濡らし続けた。