そして今朝も、花菜は意地の悪い先輩に嫌味を言われたばかりだった。
その女官は大げさにため息をつきながら、これみよがしに蔑んだ目を向ける。

『また今日もその衣?』

我が身を振り返って唐衣や裳を繁々と眺めるが、どこも汚れてはいない。
たとえ枚数は少なくても、ちゃんと手入れを怠っていなかった。

落ち込む気持ちよりも、憤る気持ちのほうが強かった。

――あなたと違って、一番下に着ている衣は毎日変えているのよ。
全く、失礼な。
あなたたちのほうがよほど不潔じゃないのよ。

この世界の常として、毎日お風呂に入るという習慣はない。
彼女たちに限らず皆、決められた吉日に沐浴するだけである。

でも花菜は違う。
お湯に浸かることこそできないが、体は毎日、盥の水で洗っている。

吉日だろうが凶の日だろうが関係ない。
直接肌に触れる衣は一度身につければ洗い、取り換えている。
体臭がしない分、自分で言うのもなんだが甘くいい香りがするのだ。

自家製ポプリを衣装箱に入れておくだけで、香なんて必要ない。

そう思ううちまた元気を取り戻した。

――ふん。負けないもん。

ツンと澄まして濡れ縁を進む。