毎度のことに、やれやれと息を吐いた花菜はふいに眩暈に襲われた。
倒れそうになり慌てて床に手をつくと、板張りの床から伝わってくる冷気が気付け薬のように意識を落ち着かせる。
「だ、大丈夫でございますか? 姫さま」
「急に動いたからね」
それはそうだろう。
なにしろひと月も寝たきりであったのだから。
顔を上げて深呼吸をした花菜は、「もう大丈夫よ」と、明るい笑顔をみせた。
「それよりも聞いてお父さま、嗣爺、小鞠! 私ね、思い出したのよ。前世を」
「前世?」
「そう、私はね、平成の世でお嬢さまだったの」
――そして。
柱の陰から彼女たちの様子を覗き見ていた黒装束の男は、花菜姫の話にクスッと笑うと、明け始めた薄闇の中に消えていった。
倒れそうになり慌てて床に手をつくと、板張りの床から伝わってくる冷気が気付け薬のように意識を落ち着かせる。
「だ、大丈夫でございますか? 姫さま」
「急に動いたからね」
それはそうだろう。
なにしろひと月も寝たきりであったのだから。
顔を上げて深呼吸をした花菜は、「もう大丈夫よ」と、明るい笑顔をみせた。
「それよりも聞いてお父さま、嗣爺、小鞠! 私ね、思い出したのよ。前世を」
「前世?」
「そう、私はね、平成の世でお嬢さまだったの」
――そして。
柱の陰から彼女たちの様子を覗き見ていた黒装束の男は、花菜姫の話にクスッと笑うと、明け始めた薄闇の中に消えていった。



