バシッ!

乾いた音が部屋中に響く。父が僕を叩いた音だ。それでも僕は無言のまま。母や父に話す気が無かったのだ。

「……使えんヤツだ。さっさっとそこに転がっている死神を殺せ!」

「……っ!!」

僕は父の言葉に反応する。父は死神よりも高い位にいる神様だ。特別な剣(父しか使えないし、血に繋がりのあるものには効果がないもの)を使って父よりも低い位にいる神様を殺すことができる。

「ハヤト、チサキ!逃げろっ!」

僕は叫ぶ。父は剣を振りかぶり、ためらいもなく振り下ろした。僕は父と2人の間に入り込み、刀で剣を受け止める。僕の中で怒りが渦巻いていた。なぜ、怒っているのか自分自身では分からない。

「そうか…お前はそこまで堕ちたのか」

「…ハヤトとチサキを守るためなら両親だろうと刃を向けます」

覚悟を決めた顔で父を見つめた。僕は話を続ける。

「……僕はもうこの家の子ではありません。僕は死神です!貴族として肩苦しく楽して過ごすよりも、死神として自由にきつい仕事をして過ごす方が断然楽しいです!!」

僕は父に向かって斬り掛かる。この刀は、元々人間の魂、もしくは物の怪にしか効果はない。その刀は神様である父に叶うはずもなく――

僕の血が宙に舞う。僕が父に剣で斬られたのだ。

「う…」

口から血がこぼれ、僕は床に膝をつく。死神にも痛覚はあるし、血も流れている。

「外道め。さっさと消え失せろ」