この可愛いヤツがオオカミ君だったりするんですが。


昼食後、一旦会社に戻る。

早々から営業部理容担当、橋川 万理がちょうど良かったと顔を出した。

その理由がなんとも些細な事。



「 ちょっとー、愛月~ 何、あの子?噂のイケメン新人君、いいじゃーん!」



女だ、紛れもなく素の女だ。

まさかライバルにはなるまいと内心はホッとしているが、女は実に欲深い生き物。



「 愛月、紹介くらいしてよ、早く!」

「 チッ 」

「 コラ、早くして 」



私も女、よくわかる。

絶対にやりそうな事に気づいてしまう余分な事。

意味なく髪を耳かけ、前髪別に目にかかってないのに指でよけて流してみる。

なぜか咳払い、小さめに音は気持ち高め。

顎引いて背筋は伸ばし口元微笑み。

とにかく少しでも目、パッチリめに相手を見つめてる。

女って…… わかりやすい生き物だ。

ただ素直だとも言える。



「 初めまして鈴木 壱流です、よろしくお願いします 」

「 あ、はい、私は橋川 万理です。愛月とは同期なの。わからない事あったら何でも聞いてね、よろしく 」



万理… 可愛くしてもダメだから。

ほんと、無理。

ライバルにはさせないし、受け付けない。



「 鈴木先輩と同期ですか、この会社は… あ、すみません電話出ます 」


――――

―――



「 で、二人で美容室回り行ってきたの?」

「 行ったよ、ロミもね 」

「 あー、上屋 颯人どうだった?偏屈だけどイケメンオーナー、私好きだわ 」

「 好きって… どっちでもいいけどあんた彼氏いるでしょ 」

「 何?彼氏?誰よ、知らない 」

「 まーたケンカ?飽きないね~ 」

「 ほっといて、じゃまたね 」



何しに来たんだか。



「 先輩、美容室ロンデルから電話ありまして手袋が欲しいと連絡でした 」

「 手袋ね、何号かなぁ?とりあえずロンデルには行くから持ってこ 」



午後からは美容室ロンデル、エレナ美容室の二軒回る。