6月上旬。
梅雨入りする前に、哲翔さんは戻ってきた。

私と同じ離れの廊下を挟んで向かい側にリビングとベットルームの2部屋が哲翔さんの生活エリア。
私の部屋よりいくらか広いけれど、ほぼ同じ作り。
この離れの一角が私達の新居となる。
とは言っても、生活自体はさほど変わらない。
当然のように哲翔さんのお世話は侍従達がしてくれるし、哲翔さん自身も忙しいようで外出していることが多いから、毎日1回夕食に顔をあわせられればいい方かなってくらい。
夜だって、それぞれの部屋に帰ってしまえば顔を合わせることもない。
元々、哲翔さんとの生活に期待しているわけではないけれど・・・まるで大学の寮みたい。
さすがにこんなことでいいんだろうかって、心配になってしまう。」」」

「お帰りなさい」
「ただいま」
今日も夕方まで外出していた哲翔さんが大きな紙袋を抱えて部屋に入って行く。


「凄い荷物ね」

ドアを半分開けたままゴソゴソと袋から出した本を片付ける哲翔さんに、廊下から声をかけた。
さすがにズケズケと入って行く勇気はない。

壁一面に作られた本棚はすでに埋め尽くされている。
これ以上どこに入るんだろうかと思ったら、足下の段ボールに無造作に詰め込まれた本達。
一見して難しそうな本が多いけれど・・・
ウワー、英語の本もある。

「原書のまま読んだ方が作者の意図が伝わるから」
視線を感じて、説明してくれた。

「ふーん」
私だって読めるものならそうしたいけれど、無理。