5月中旬。

私は病院を退院した。

体に負った傷はきれいになくなり、後は左腕の骨折だけ。

そのギブスも後1ヶ月で外れる予定。


「虹子様、お車の用意ができました」

「はい」


退院後の静養先については随分悩んだ。

父さんは実家に帰ってこいと言ってくれているし、

お母様は海外で静養したらどうかと言ってくださる。

もちろん、高宮のお屋敷に帰る選択もある。

色々考えた結果、郊外の別荘で静養することにした。


「お荷物はこれだけですか?」

「ええ。現地までは乃梨子さんが送ってくれるの?」

「はい。哲翔様はあちらでお待ちです」

「そう」

ちょっと寂しい。

「本当は哲翔様が迎えに来るとおっしゃったんですよ。でも、奥様が反対なさって」

「お母様が?」

「ええ。感動の対面は向こうに行ってからでいいでしょうって」

「へー」

お母様らしい。