「容体も落ち着いていることですし、今回はいいでしょう」
「かしこまりました」

あの方とは主人が外で作った娘
娘とは言ってももう50歳になる。
私自身ここ20年ほど会ったこともない。
哲之さんの娘とは言っても、高宮の姓を名乗ることのない人。


「それより百合子さん」
「はいお母様」
「哲翔(てつと)を呼んでください」
「哲翔ですか?」
「ええ。旦那様もいつ何が起きるか分からないし、次のことを考えておかないとね」
「はあぁ」
やはり、百合子さんは気乗りがしない様子。

でも、今はそんなことを気にしてはいられない。
高宮の家を守るためにも、次世代の担い手をきっちり決めておかなくては。