咲良の様子がおかしくなってから、随分時間がたった。


静養もかねて入院させた病院はすでに退院となっている。

一見よくなったようにも見える。

日常的な会話も成立しているし、笑顔が見えるときもある。

しかし、

食事はなかなか進まない。

頑張って食べても、戻してしまう。


咲良自身は静養に努めているが、

心と体がついて行かない。


そして何よりも、

環境の変化に過敏になってしまって・・・


ブブブ ブブブ。

着信。

咲良の家からだ。


『もしもし、哲翔君?』

焦ったような声をした、咲良の母さん。

「どうしました?」

嫌な予感を感じながら答えた。


『私が目を離したすきに、お薬を全部飲んでしまって・・・』

「ええっ」

またかぁ。