「虹子の名前は亡くなったばあさんがつけたんだ。本当は孫娘につけるつもりだった名前。残念なことに孫は男の俺しかいなかったから。俺に女の子が生まれたらつけてくれって言い残して死んでいった」
「へー」
「虹子の虹は、虹色の意味だ。どんな色にも染まれる子になって欲しいって事らしい。どこかで高宮との縁談を想定していたのかもしれないな」
「そんな・・・」
「今のお前には縁談なんて迷惑な話だと思う、親として申し訳ないとも思う。でも、亡くなった先祖がずっと願ってきたことだ。1度会ってみてくれ。それで断っても誰も何も言わないから。何かあれば、父さんが断りに行ってやるから」

公務員の父さんはとても真面目な人。
嘘のつけない人。
高宮家から金銭的援助を受けていたことだって、黙っていることはできるのに話してくれた。
嫌なら断ってもいいと言ってくれるのも本心なんだと思う。

「明日、10時に迎えが来る」
真っ直ぐに私を見る父さん。