医師の見立て通り、容体は安定してきた。
すでに3日も意識がなく、血圧も不安定だったのが嘘の様に血色もよくなっていった。

「先生のお話では明日に意識も戻るだろうとのことです」
駆けつけた息子の妻、百合子さんもホッとしている。

「そう、それはよかった」

これでとりあえずの峠は越えた。
でも、いつまた何があるかは分からない。
何しろ、85歳の高齢なのだから。


「大奥様」
一番年配の側近が声をかけた。

「何ですか?」
「あの方に連絡されなくてよろしいのですか?」

あの方・・・
誰のことかは分かっている。