まあいいわ。

わざわざ聞き出すこともない。

哲翔の嫌がることをしようとは思わない。


哲翔はまっすぐで嘘のつけない人。

そのことは私が一番知っているから。


「虹子」

廊下を少し進んだところで、哲翔が振り返った。


「どうしたの?」

その表情の真剣さに、何を言われるのかと恐怖を感じる。


ほんの数秒、哲翔が言いよどんだ。


「何なの?」

そんなにもったいぶられたら怖いじゃない。



「今日、咲良が退院する」