「俺と別れることになってもいいのか?」
脅しの気持ちを込めて言ってみた。

「哲翔こそ、平気なの?」
「はあ?」
「哲翔は私と別れられるの?」

うっ。
嫌な奴。

「じゃあ、どうしたらいいんだよ」
ムッとしながら、吐き捨てた。

クスッ。
こんな時でも、咲良は余裕を見せる。

「笑うな。大体、自立することと結婚が両立しないなんて、ナンセンスだろう。現にうちの母さんだって働いているぞ」

母さんは女優業をしながら、高宮家の嫁をしている。
咲良だってできない訳ないだろう。

「お母様みたいにちゃんと仕事で結果を残してからならいいのよ。ねえ、もう少しこのままではいられないの?」
「それができればこんなに苦労してないさ」
俺だって出来ることなら・・・

「私も高宮家の事情はわかるつもりよ。でも今は嫌なの。だから、もし哲翔が結婚を決めて私と別れる気になったら、それは受け入れるわ」
「別れるつもりなのか?」
「しかたないじゃない」

どんだけ自信があるんだよ。


不意に咲良が立ち上がった。
思わず視線を送る。

「今日は帰るわ。しばらくは、ここに来ない方がいいわね」
と荷物を手にする。

「さよなら」
実にあっけなく、咲良は部屋を出て行った。

本気で和kれるつもりなのか、
別れられる訳ないと思っているのか、
自信があるのか、
俺が試されているのか、
正直わからない。

どちらにしても、俺は許嫁とやらに会ってみるしかないらしい