険しい表情の哲翔さんに事情を問い詰めることが出来ないまま、私は車に乗り込んだ。


途中、菅原さんとお母様、太郎さんからも電話が入ったけれど、「運転中だから」と哲翔さんは電話に出なかった。


高宮邸までの1時間半。

何も話さない無言の時間。

唯々悪い妄想だけが膨らんで、いたたまれなくなっていた。



「虹子」

もうすぐ着くぞというときになって、哲翔さんが口を開いた。

「何?」

「明日の週刊誌に、俺の記事が出るらしい」

「週刊誌?」

「ああ」

本当は「何の記事」と聞きたいのに、聞けない。

「すまないが、しばらくは騒々しくなると思う」


まっすぐに前を見る哲翔さんの横顔が辛そうで、私は黙ってしまった。