「で、家を飛び出したんだ」
「まあね」

突然お金を貸して欲しいと言った以上何の説明もしないわけにはいかず、簡単に事情説明をした。
もちろん高宮の家の名前は出さず、『私の知らないところで縁談が決まっていて腹が立って飛び出した』と伝えた。

「でもさあ、断っていいって言われてるんだろう?」
じゃあいいじゃないと言いたそうな祐介くん。

「知らないところで勝手に決められたことが嫌なのよ」
「ふーん」
何だか気のない返事。

「悪いけれど、五千円でいいから貸して」
手を合わせて拝んでみた。

「いいけど・・・」
そう言ってちょっと考え込んだ祐介くん。

「よかったら俺に付き合ってよ。ちょうどバイト代も入ってさ、飲みに行きたかったんだ。おごるから」
「えー、でも」
「あまり遅くならないうちに送るから。いいだろう?」
「まあ、いいけれど・・・」

「じゃあ、行こう」
祐介くんは私の腕を取り駅に向かって歩き出した。