「なあ」

「ん?」


「苦しいこともあるだろうけれど、もう少し辛抱してくれ。あと数年すれば、俺も高宮の後継者として一人前に扱われるようになる。そうしたら、好きにさせてやるから。今はおとなしくしていてくれ」


おとなしくねえ。

黙ってニコニコしながら、座っていろってことかしら。

それに、

好きにさせてやるって、別れるってこと?


「まあ、そういうことだから。荷物の整理も手続きもあるし、しばらくマンションに泊って来る。ちょうど卒論の仕上げの時期だから、1週間ほどいてすべて終わらせて帰ってくるよ」

「うん」

私に異論はない。


きっと咲良さんとも会うんだと思うけれど、反対はしない。

今は、哲翔さんを信じる。