しかし、飛び出したからと言って行く当てがあるわけじゃない。
とりあえず友達に連絡してみて、暇な子を探そう。

あれ?

駅まで来て切符を買おうとしたとき、財布を忘れたことに気づいた。

「ヤダ、どうしよう」

さすがに家には取りに帰れない。
車を持ってる友達を探すか、それとも康生に持ってきてもらうか。
どちらにしても恥ずかしいし、困ったなあ。

その時、

「虹子、どうしたの?」
後ろから声がかけられた。

「え?」

そこに立っていたのは、バイト仲間の祐介くん。

「どうしたの?」
「それはこっちの台詞。さっきから1人で百面相してるから、声かけていいか迷ったよ」
ケラケラと笑っている。

あーよかった。これで助かった。

「あの、祐介くん。お金貸してくれない?」
「はあ?」