高宮邸に向かう車の中で、虹子は無言のままだった。


ジッと窓の外を見つめて、時々涙ぐんでいる。

きっと帰りたくないと思っているんだろうな。


大丈夫かと聞きたくて、聞けない。

それだけの思いが伝わってくる。


「そんなに見ないで」

えっ?

「恥ずかしいから」

「お子ちゃまだな」

言いながら、反対を向いた。


いい歳して家族を恋しがって泣くなんて、随分子供じみている。

昨日までは単純にそう思っていた。

でも、今は少し違う。