「大奥様、少しお休みください」
遠慮がちに声をかける女性。

「ありがとう。私は大丈夫ですから、あなたたちも休みなさい」

そう答える私は高宮家当主の妻、高宮雪江(たかみやゆきえ)。

「雪江様、無理をされますとお体に触ります」
乳姉妹の佐知(さち)がさらに口にする。

「ありがとう」

物心ついたときから共に生きてきた佐知が、心配してくれているのはよく分かった。

「私は本当に大丈夫だから。今は旦那様のお側にいたいの」

「かしこまりました」
納得したように答える。

それ以上、止める者はいなかった。