「ねえ、哲翔さん」

「何?」

「許婚がいるって聞かされて、まず誰に話した?」

「誰って・・・」

哲翔さんが怪訝そうな顔をしている。

「やっぱり咲良さん?」

「・・・」

返事は返ってこない。

なるほど、図星ですか。


「私は祐介くんだったの。詳しい事情を話したわけではないけれど、励ましてくれて美味しい食事をご馳走してくれた」

「ふーん」

仏頂面の哲翔さん。

「だから、わざとしらんフリなんてできない。祐介くんは哲翔さんに出会う前からの友達だもの。哲翔さんの言った『過去を詮索するのはやめよう』ってやつね」


哲翔さんは何も言い返さなかった。

でも、目茶苦茶不機嫌そうに

「俺は風呂に行くから」と、部屋を出て行った。