「・・くっ・・!!!!!」
もっと男らしく力を付けていれば良かった。
引っ張り上げられる力を持っていれば良かった。
この状態を維持するだけで精一杯なのに・・・どうすれば・・・
握力が無くなっていくのを秒速で感じていた。
冷静さを欠いたこの頭に、
“いっそこのまま僕も一緒に”・・
なんて事もよぎった時だった。
「・・・何やってんだお前。」
「!?」
「“3”で行くぞ。1、2の・・」
「3!」
なんて良いタイミングで帰ってきてくれたんだ親友よ・・・。
僕の隣でかがみ、チサトの腕を一緒に引っ張ってくれた荒木のおかげで、
なんとか暗闇から救出する事が出来た。
「・・・・スッ・・スッ・・ウゥ・・・・。」
「ハァハァ・・ハァハァ・・
ハァハァ・・ハァハァ・・。」
「まさか・・フラれたからって殺人未遂か?」
どうして君はこの状況でそんな冷静なんだ。
やっぱり荒木はある意味“悟り”を開いている男だった。
そのまま地べたに泣き崩れるチサト、
あまりの想定外過ぎる事態と、
使い果たした腕力で息が整わない僕。
遠くからまだ聞こえ続ける花火の音だけが、これは夢じゃないと実感させてくれた。



