結局小便は一滴も出なかったけど、手だけはしっかり洗って頭をクールにさせる。
ハンカチで手を拭いて再び教室へと・・・・
「おい。」
「!?」
いつの間にか隣の蛇口の前に人が立っていた。
君は野球部に入るつもりなのかい?
それとも柔道部かい?
と聞きたくなるような坊主頭の・・
僕が3人一斉に立ち向かっても勝てそうに無いゴツそうな男・・・。
「な・・なに?」
声が裏返っていたのは言うまでも無い。
いきなりこんな大男に話し掛けられ平然を保てるようなメンタルがあったら、
そもそもこんな所へエスケープしていない。
「チャック開いてるぞ。」
「え!?」
入学早々カツアゲ被害に遭うと覚悟していたのに、
その大男の口から飛び出したのは意外な言葉だった。
そのまま僕の股間を指さす。
「・・・・・・・・ホントだ・・。」
こんなイージーミスを犯してしまうほど、
僕はあの眼帯の子に心奪われていた。
こんな格好で教室へ行ったら、
入学早々社会的地位を失うところだった。