「じゃあまずは壁にこびりついたやつからやってくか。」
荒木はチサトの可愛さに動揺する事は無さそうだったけど、
僕とチサトのやり取りが毎回ツボに入るらしく、
この時も顔を紅潮させた僕を見て、
笑いながらホースを握りしめていた。
「ねぇジョウって彼女いるの?」
「いないよ。」
「好きな子は?」
「いない。」
「窪田は?」
「僕にいるわけないだろ?」
「嘘だ~。」
「ホントだよ。」
「実はパソコンの中にいるんだろ少年?」
「僕はオタクじゃありません。」
プールの中に降り立ち、
一生懸命デッキブラシを横に倒しながらゴシゴシと壁をけずる。
“手伝ってあげるよ”と言い出しっぺのはずのチサトは、
そんな僕達にホースの水を浴びせながらチャチャを入れてきた。