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“海に行きたい”


夏休み最終日、
チサトが僕にそう言ってくれた。


「・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・。」



群馬には海が無いので、
電車を乗り継いで新潟まで出た。


荒木も誘ったんだけど・・
“お腹が痛い”と言って断られた。


・・・・本当に痛かったのかどうかは言うまでもないけど・・。



「・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・。」


晴れているわけでもなく、
ぱらつくわけでもない、

中途半端な曇天の空。


砂浜に座った僕達は、何よりも広く、何よりも穏やかな海を見続ける。



「窪田。」


「うん。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・・・。」



その横顔から静かに滴が落ちていた。

それを見て、
どこか安堵する自分がいる。


ずっと抑えつけられて、
ずっと我慢し続けていたから、

本来持っていた感情が少しずつ溢れ出していっているようで、どこか嬉しかった。