「水森さん。」
「はい・・。」
「君はここに残っていてください。
それからもしお母さんが、
“灰皿が無い”と言い出したら、
“佐倉が持って行った”
と言ってください。」
「・・・うん・・。」
「聞かれるまで答えなくていいからね。
“あぁ~そういえば・・”
という感じで答えるように。」
「・・・・・・。」
「もう1つ。
佐倉からの暴行を俺にも相談した事にしてください。
これも、誰かに聞かれたら答えればいいからね。」
「はい・・。」
「じゃあ窪田君、荒木君。茣蓙でグルグル巻きにして一緒に運ぼうか。」
「「!?」」
「・・・・・どうしたの?」
「・・・・・協力してくれるんですか?」
「・・なんで・・?」
「あ、協力はするけど俺は力仕事一切無理だからね。
埋めるのは君達だけでやるように。」
丸井先生の応対は意外なものだった。
僕達の事を叱る事なく、諭す事もなく・・。
荒木と二人、
アイツの死体を運ぶ準備をする間、
先生はずっとチサトに何かを優しく語りかけていた。
「じゃあ張り切って行ってみよー。」
重苦しいこの場の空気を変えようとしたのか、
似合わない出発進行のポーズと共に僕達はチサトの家を出た。



