僕や荒木はこの場に残り、
向かいにはもう1人の男性が残る。
「君たち、よくあの子を連れてきてくれたね。」
「「・・・・?」」
「私もこれまで何度も・・
あの子のように、親やその交際相手から暴力を受ける子供達を見てきた。」
「「・・・・・・・。」」
「でもそれは氷山の一角に過ぎない。
ほとんどの被害者は、
その被害を我々に訴える事無く、
そのまま最悪のケースに繋がってしまう事がほとんどなんだ。」
「そ、そうなんですか・・・?」
「“日常化”と“服従”。
それが“当たり前”と感じてしまって、
被害感情が次第に薄れてしまう。
それから、相手との絶対的な力の差に、“従わなければ”という心理が働いてしまう。
虐待や性的悪戯を受ける子供達は、
大体この2つにハマってしまうんだ。」
「・・・チサトを傷つけた奴はちゃんと捕まえてくれますよね?」
木下さんの話を聞きながら、
荒木が質問をする。
“全力を尽くします”
木下さんから返ってきた言葉に安堵し、
女性警官と話をしていたチサトを待って、
僕達は警察署を出た。



