「…いや、なんでもない」

「なんでもなくないでしょ、その顔は」

「んーん、いーの」


でた、温の秘密主義。
そーやって教えてくれないことが多い。


「…ずるいよね、温って」

「どこが?」

「……そーゆーとこ」


今だって、またとぼけてさ。何も教えてくれない。そのくせ、私の話を聞き出すのがうまい。ずるい。


「よくわかんないけど、さ。がんばってみれば。もし結果悪かったら、ケーキくらいは奢ってあげるからさ」

「……ありがと、温」


でも、なんだかんだ優しいから、責めることもできないんだよなぁ。


「帰りの電車は?」

「……たまに見かける程度。私、寄り道ばっかりしちゃうから」

「そっか。じゃあ、また明日も見られるといいね」

「うん」