「…ほんとに、かわいいやつめ」

「……それ、上倉くんに言われたかったなぁ」


それになぜ。温が言ってくるの。嫌味に聞こえても仕方ないからね、それ。


「言われるんじゃないのーそのうち」

「付き合ってるどころか友達ですらないし、友達どころか話したことすらないよ」

「なに、ひとめぼれ?」


からかうように聞いてくる温。すぐに恥ずかしくなった。温なのに。


「…ん、たぶん」

「なにそれ」

「…前にね、上倉くんがおばあさん助けてたの。駅で。それ見て、優しい人なんだなぁって思って」

「……そう」

「どうしたの温。変な顔して」


いつもの、今にも何か言いそうな顔……とは程遠い顔になってる。なんか難しいこと考えてるみたいな。