午前7時33分。

最寄り駅の2番ホーム。

そこから見えるのは、反対方向に行く電車を待つ彼。



電車が遅れてくれたらいいのに、と思う。

そしたら、彼のことをもう少しだけ見ていられるから。


黒髪に近い茶髪。

涼しげな目元の泣きボクロ。

スッと通った鼻筋。

血色のいい唇。

その全てが、羨ましくなるくらいに整っている。



少しずつ近づいてくる電車の音、それにつられるように今日の分のエネルギーを存分に目に焼き付ける。



──プシュー


あーあ、見えなくなっちゃった。

けれど、降りる人がほとんどないこの駅では、すぐに電車に乗ることができる。

だけどそれは、並ぶときに一番前に並べるように私が苦手な早起きをがんばっているからだ。

そして、いつものように電車の奥の方に行って、乗ったときと反対側のドアの窓から、もう少しの間だけ彼を見つめる。

それなのに、彼と目が合ったことは一度もない。こんなに見つめてるんだから、一度くらい目が合ったっていいと思うのに。