それでも針の痛みなんてその後の細胞の再生の痛みに比べれば微々たるもの。
薬が浸透するや否やミシミシと音を立て骨が再生し、それに合わせて細胞や筋肉も再生していくのだが。
その際の痛みたるや、ソルトであっても思わず歯を食いしばるような痛みを伴うものであるのだ。
最悪にも魔女の瘴気の名残もあって、刺激に対して体が異常に過敏になっている今。
確かに苦痛である筈のその刺激にまで変に熱が上がって動悸まで強まってしまうのだ。
百夜と言えばそんなソルトの様子を特別親身に案じるでもなく、職務上の治療の観察とばかりと無興味に見つめいつもの甘ったるい煙を吸って吐いて。
「うーん、なかなかにそそられるねえ。色男の苦悶顔って感じだよリっ君」
「…気色悪ぃよ。男にそれ言われて嬉しいと思うか?」
「僕だって男色の気はないよ。客観的感想ってやつだ。女の子がここに居たらキャーキャー言いそうなピンクいリっ君だなぁって」
「ピンク言うな」
「いやぁ、でも今にも甘い匂いの一つでも漂ってきそうな色気むんむんだよぉ?」
「……………」
「ん?どうした?物の例えだよ?」
別に本気でそんな甘さを感じたわけじゃない。とわざわざ百夜が突っ込んだのは目の前でソルトが自分の匂いを確めるような素振りを始めたからだ。



