かと言って、ここで素直に認めるわけにもいかず。
「…へ?…そっすか?」
「……」
「え〜?…うーん、多分あの魔女の匂いだと思うんですけど」
こんな風に、自分でも改めて匂いを確かめてみせながらすっとぼけるくらいしか切り返しもなく。
それでも追求される場合はどうしたもんかと打開策を模索し始めた刹那。
「そうですか。…いや、気のせいだったんでしょうね。お引止めして申し訳ありせん」
「あ、いや…、」
「それに、今は早く戻ってその傷の手当てもせねば。そこまでの細胞や血肉の欠損となると魔導師の力を持ってしてもどこまで治癒出来るかわかりませんが」
さあ、参りましょう。と、ソルトより先に話を切り上げ背を向ける姿には心底安堵し胸を撫で下ろす。
ただでさえ疲労に満ちているのにこれ以上の厄介ごとは御免だ。
それにしてもなんて厄日であったのか。
なんにせよ……埋め合わせはしてやらねえと。
最後にソルトの思考が巡るのはやはり六花の事であるのだ。
会いてえ…。



