それに、不都合にもどんどんと日は低くなり満月の力が増してくる。
魔女の瘴気と満月のダブルパンチには流石にソルトも正気を保てる自信がないのだ。
「それにしても…非番であったでしょうに災難でしたね」
「ハハッ…それだけ普段の行いが悪いって事ですかね。……でも、それを言ったら珍しいですね?時雨さまがこうして現場に出向くなんて」
時雨は基本本部常駐の魔導師であって神父ではない。
だからこんな現場に駆り出されるような立場では無いはずであるのに。
どうしてまた?なんて見つめ返せば、フッと眉尻の下がった様な笑みが一つ。
「こんな危険な役回りに充てがわれたのが君だと通信で知ったので。それにたまたま僕も出先でしたので」
それだけで?
なんて事は思わない。
寧ろ、そんな風に気にかけてもらえていたなんて感謝しかない。
わざわざ、出向いてくれたなんて。
「なんか…すみません。ありがとうございます」
「いえいえ。さて、リッカくんも一度本部に報告に行かないとですよね?動けますか?」
「あ、はい。…大丈夫っす」
気怠くても動けないわけじゃない。
こうして時雨と面と向かっているのもどうも気恥ずかしいしと、ヒョイと身を立ち上げた瞬間。
やっぱり匂うな。



