一体何を?なんてソルトが怪訝な眼差しを向けてようやく。
「隠蔽工作をね。この魔女から僕とソルトの関係がバレたら困るでしょ?」
「あっ…」
「この場に僕は居なかった。魔女はソルトに隙を突かれたって事で」
それでいいよね?と言わんばかりの笑みに反論はない。
寧ろ後処理サンキューと拝みたい程に。
魔女様様、六花様様だ。
そんな工作が済んでしまえばいよいよ逃げるばかりだと六花は飛び去って姿を消し。
その直後、まさにタッチの差で援軍の神父が駆けつけたのだ。
ギリギリセーフ。
内心そんな安堵を呟いて息を吐いていれば。
「リッカくん大丈夫ですか!?」
聞き覚えのある声音に振り返れば、丁度身をかがめた姿と顔の高さが一致する。
それでも向けられるのはいつもの穏やかな笑みではなく、心底ソルトを按じているような眉根の寄ったもの。
そんな姿には逆にソルトの力も抜けフッと脱力の笑みを浮かべてしまうのだ。
「時雨さま…」
「あんな魔女の脅威によく持ち堪えましたね。だいぶ消耗はしているようですが命に差し障るような事がなくて良かったです」
「ええ、まあ…なんとか無事っす」
まだ体は魔女の瘴気の名残に苛まれてはいるが、幸い追い討ちをかけるような要素はない。
六花には申し訳ないが、今のこの状態では離れられて助かったなんて感覚さえ覚える。
この本能の高ぶりのままあの色香に触れ続けてしまっていたら…。
それこそ我を忘れて何をしたか分かったものじゃない。



