あれだけの広範囲、全ての物を惑わし拒む濃霧の様であった瘴気が一瞬で。
晴れてしまえば覗くのは血なまぐささとは縁遠いような晴天の空であるのだ。
澄んだ空気に見通しの良い景観。
一瞬にして本来の状態に戻されてしまった事には魔女も衝撃を覚えて声を失う程。
周囲を見渡す視線は背後まで。
何がどうしたのかと、僅かにも唇を動かした刹那だ。
「教えてあげる、」
「っ…!!!」
「僕、自分の物横取りされるの大っ嫌いなんだ」
「なっ……んあっ___!?」
一変した状況に気を取られている合間、不意に響いた声音は自分が目を逸らしたばかりの前方から。
慌てて前に向き直れば、ソルトとの間を阻むように立つ六花の姿があるのだ。
いつの間に。なんて衝撃は視界に捉えた更なる衝撃に塗り替えられる。
先程の瘴気の慣れの果てらしきものが六花の手にあって、事もあろうに六花はそれをわたあめに模してパクリと噛り付いてみせたのだ。
だけど、そんな衝撃すら一瞬のもの。
響いた銃声と身体に得た衝撃の前では。
何が起こったのか。と、失せて行く魔力に絶望を覚えながら魔女の双眸が映しこんでいたのは。
ほんの少し体を逸らした六花と、その背後で杭に打たれたまま満身創痍にもしっかりと銃口を向けているソルトの姿。



