何が起きたのか。
ソルトが銃を構え引き金を引いたのも一瞬であったのなら、その手を貫かれたのも一瞬であったのだ。
魔女の漆黒の髪によって。
まるで鋭利な杭の如く、ソルトの掌を貫くとそのまま地面に縫い付けたのだ。
次の瞬間には掌を貫いた部分だけ杭として残り、髪としてはらりと姿を戻したのだが。
「やっぱり、あなたって面白いわ。充分に神経も極限状態な筈なのにまさかあんな俊敏に動けちゃうなんて」
「っ………」
「まあ……一瞬の灯ってやつだったみたいだけど。折角の奇跡的な反撃をあっさり打ち崩しちゃってごめんね?その右手も……今後使い物になるかしら?」
「っ……くっ……」
「フフッ…睨んでる睨んでる。本当にタフで益々気に入っちゃう。半分人間な魔混じりは本命じゃないんだけど……キープとして保存しておくのも良いわね。こんな風にもっと杭打って、標本みたいに。きっとインテリアとしても映えるわ。あなた……綺麗だから」
「………あく…趣味が…」
「それ、魔女としては最高の褒め言葉だわ」
これ以上ない賞賛を受けたかの様に、にっこりと微笑む姿は皮肉にも艶やかで美しい。
美しい程妖しく危険で。
本当…狂ってる。
人を標本にして飾るだとか悪趣味もいいとこだ。



