何でこんな大掛かりの力の誇示をしてみせたのか。
しかも満月という魔の気の強まる日に。
「お前……魔を孕む気か?」
その為の言わば見せつけ。
魔女がここに居ると。
力があり魔との結びを望む魔女がいると知らしめる為のあの所業だったのだ。
魔女として生まれても早々魔女らしく生きる人間は少ない。
ましてや魔と望んで繋がりたいなんて魔女は稀も稀だろう。
その稀なタイプが最悪にもこの魔女であったらしい。
まさに魔女に生まれるべくした魔女であったという事なのだろうが。
ソルトの確信である問いかけに初めて感情の伴った笑みを浮かべたのがその証拠。
そうだ。と。
肯定を示したような笑みには、一瞬ソルトの全神経が研ぎ澄まされ目にもとまらぬ速さで銃口を魔女に向け引き金を引いたのだ。
が…、
「っ…うぁぁぁぁ……」
「ヤダ……おいたはしないで?」
パアンと銃声が響いた直後に声をあげることになったのはソルトの方。
弾かれた銃弾は魔女の身体の手前で動きを止め無情にもパラリと地面に転がっていき。
ほぼ同時にソルトの銃もソルトの手から落ち鈍い音を立てながら地面に跳ね返る。
そんな落ちた銃の傍にはじわじわと鮮血が水溜まりの様に広がり始めるのだ。
ソルトの鮮血が。



