それでも、完全に我を忘れてとならないのがソルトの屈強といえる耐久性。
定まらない意識だろうが、ままならない躰だろうが、双眸だけはしっかりと相手を捉えて挑むような意識を揺らす。
そうして捉えた姿は前情報通り。
長い黒髪に白い肌。
大きな双眸は澄んだ青眼。
六花とは似ても似つかぬ別人であるが。
こんな事件を起こした魔女でなければ純粋に見惚れてしまう程美しく整った容姿であるのだ。
見たままの年齢を推定すれば20代前半から半ばと言ったところだろう。
ただ服装に至っては実に魔女らしい黒一色のもの。
そんな魔女の嗜みとばかりの魔女らしさを目の当たりにしてしまえば、不利な状況だなんてことも忘れて思わずの失笑。
どっかのジャージ魔女とは魔女の基本から違うってか。
なんて、こんな時でさえも六花の事を思い出してしまうのだ。
「笑える余裕がある様には思えないのに」
「はっ…ああ、ねえな」
「そこは認めるの?虚勢を張る気はないんだ?」
「こんな這いつくばって口にする虚勢にどんな効果があるってんだよ?」
「………おにーさん、変な人ね」
「嬉しいねぇ。いきなり街をぶっ壊す異常思考な変人魔女に変人扱いされるなんて」
「……煩いよ?」
「っ__!!!?」
何をされたのか。
分かったのは無感情に魔女の口元が緩く弧を描いた事だけ。
魔女の一声を聞き終えたと同時には体の倦怠感が増し、心臓が痛みを覚える程に動悸を強めてきたのだ。
と、同時の発熱に欲求の割り増しとくれば。
ああ、これ……なんかデジャヴ。



