そう、締め出し。
百夜の邪魔だという言葉が響くと同時にソルトと時雨は有無を言わさず研究室の扉の前に締め出されてしまったのだ。
それこそ魔導士らしい力によって。
しかもだ、
「惚気全開のお悩み相談ならそこの暇人魔導士さまにでも聞いてもらうといい」
そんな追い打ちの一言が扉を一枚挟んだすぐ後ろから響いてくるものだからして。
「っ…てめぇっ!だから惚気じゃねえんだって!!切実っ!!」
「……」
「こらっ!?百夜ぁっ!?」
「フフッ、無駄ですよ。百夜どのは実に気まぐれでありながら意志は強固。聞く気が無いと言ったら一切取り合ってはくれませんよ」
「っ~~~でしょうね」
ソルトもそれは百も承知。
寧ろ今までが異例に百夜の興味が継続していたというだけの話。
その異例についつい慣れて頼り切っていたのはソルトの問題。
だからこそ逆恨みの様な不満を申し立てるつもりもなく、それでも重苦しい溜め息ばかりは口から零れ落ちる。
でもまあ、しゃあねえか。と程々に諦めもつきクシャリと柔らかな髪を一掻きしたタイミング。
「じゃあ、お話を聞きましょうか」
「……へっ?」
ソルトが大人しく帰宅しようかとまさに片足を踏み出した刹那、背後から投げられた一言には思わず間の抜けた声音と表情を向けてしまった。



