六花はソルトに愛されてる自覚が足りない。
とは、言わずとも、ソルトに対する命の重みと六花のそれがどうも比例しない。
ソルトが命を賭すような事にはあれほど激昂したというのに、六花はソルトの為なら安易に命を賭しかねないのだ。
勿論、六花も死ぬつもりなんてない。
それでも、いざ己かソルトかとなった選択の場ではあっさり自分の命を手放すだろう。
そんな危ない意識を持つ六花をどうして戦さ場なんかに連れ添わせる事が出来ようか。
それでも、六花が簡単に折れる女でないことはソルトも十分に理解している。
なら、意識させるしかないのだ。
ソルトの思わぬ宣言には歓喜混じりの驚愕を見せて固まっている六花だが、その半面ではやはりどこか意味が分からないというような表情もチラつかせる。
嬉しいが、何を言っているのかと。
自分の価値はソルト在っての物だと言わんばかりの大きな眼差しには、ソルトも苦笑交じりの溜め息を漏らしつつ。
「お前にとっては無価値だろうが俺には違う」
「ソル…」
「都合良く使うのは時と場合の用途に応じて。お前の命を賭して戦うなんざ御免だね。まあ、俺を守りたいってなら邪魔はしねえしありがたいが」
「んんっ?えっと…それって結局どっち…」
「お前の命優先だ」
「……」
「俺の為に死ぬような真似はするな。その柔肌に怪我も許さねえ。俺を死なせたくねえならまずはお前がお前を大事に守れ」
「っ~~~ソルトって我儘。ってか、引くほど僕の事好きだよねぇぇぇぇ」
「どっちがだクソガキ。なにガチに引いたような目してやがる」
「僕の命にここまで拘るのなんかソルトくらいだろうなって呆れつつ惚れ直してたんだよ」
「じゃあ、その愛しの俺の為にさっさと足になってあそこまで飛…」
『飛べ』と最後までおふざけに笑って言いきれなかったのはソルトの勘が痛い程引かれたからだ。



