「六花、このまま霧の中心の真上に行けるか?」
「……嫌」
「はっ?」
「嫌だって言ったの。行きたくなーい」
「はぁっ!?おまっ…今度はどんな嫌がらせだ!?」
「ソルトこそどれだけ僕に嫌がらせする気なのさ!!」
「ああんっ!?」
「どうせソルトの事だからまた無茶苦茶にもあの中に飛び込もうとか思ってたでしょ!1人で!」
「あったりまえだろ!危険だって分かってる場所に可愛い恋人を連れ立って行く馬鹿がどこにいるっつーんだ!!」
「おっふぅぅぅっ!ちょっ…今の返しは予想外ぃぃぃ。まともに食らい過ぎて憤ってた筈の自分が乙女な顔になっちゃったわ。っ…で、でもでもっ、とにかく嫌っ、駄目っ!!」
「おっまえ、さっきまで自分を都合よく使えとか言い腐っておいてぇぇぇ」
「言ったよ!都合よく使いたまえよっ!僕が怒ってるのは結局カッコイイ理由立て並べて僕を蔑ろにしようとするソルトの分からず屋に対してだっての!!」
「分かってるからだからだろうが!都合良くお前の魔女の力を利用して戦ったとしてだ、相手が真っ先に狙うのは必然的にお前になるだろっ!」
「そんなの僕はっ、」
「お前が俺を失うのが嫌なように、俺もお前を失うのは嫌だし怖いんだよっ!!」
「……」
「……いい加減、俺の一等大事な命だって自覚してくんねぇかな、本当」
「っ…」
一等大事。
己の命よりも。



