「ものの見事何も見えねえな…」

「まあ、この意図的な霧みたいな中じゃねえ」

バカップル全開の会話も程々。

乗り慣れない箒への恐怖もすでに飛んだ。

敵の本陣といえるビルの高層に差し掛かった途端に視界を覆う濃霧に見舞われたのだ。

流石にどこか呑気であった糸もピンッと張り直るという物。

どこか隙がないかと見えないながらにビル上空であろう位置まで飛び上がり自分達の周囲だけはクリアにはなったものの、肝心なビルのてっぺん辺りは未だ濃い霧に覆われてどんなデザインの建造物なのかも分からない。

そんな状況下で魔女の姿を捉えるなんて出来る筈もなく、結果さっきのような会話に繋がるというわけだ。

それでも先程ソルトが下から見上げた際にはこんな霧などなかったのだ。

こんな災害めいた事態に不似合いな程の晴天を仰いだ筈。

なのに、ソルトと六花が上空に来た途端にこの現状だ。

「……気づかれてるか」

「当然だろうね。これだけの事やらかせる魔女なら僕たちの気配くらいは察知できるんじゃない」

「……それって、お前も他の魔女の気配とか分かったりするって事か?」

「ん~、どうなんだろう?」

「どうなんだろうって…、自分の事だろ?」

「だって僕別にソルト以外に興味ないし。魔女って言っても魔女らしい事も最低限ソルトに関わるような事しかしてきてないから」

「おまっ……だったら余計に捨てろ!捨てちまえ!!そんな宝の持ち腐れみたいな魔力!!碌な事に使ってねえじゃんか!!」

「失敬な!!少なくともあそこにいる魔女よりかは有意義でしょ!?まともでしょ!?」

「ストーキングも列記とした犯罪なんじゃボケッ!!」

確かにこんな事態を引き起こした魔女よりかは六花はまともと言えるだろうが、唯一の被害者と言えるソルトからすれば六花のそれも悪質な魔女行為と言えるのだ。