荒ぶった感情を瞬時に鎮静しにくる六花の冷静な眼差しは効果絶大。

暗示のような眼光にひとたび捕まればみるみる余計な熱が引いて思考がクリアになるのだ。

そんな瞬間を見計らってだ。

「目には目を、歯には?」

「えっと……六花?さっきから何の…」

「歯には?」

「……歯……を?」

「うん、目には目を、歯には歯を。じゃあ……魔女には?」

「っ………」

「……魔女しかないじゃない」

「なっ……」

ニッコリと笑む顔の意は『そうでしょ?』という念押しだ。

思いもよらなかった六花の助言にはソルトの思考もままならず、間抜けにもあんぐりと大口をあけたままに固まってしまう。

そんなソルトを他所に六花と言えば実に呑気なマイペースを貫いていて、

「ソルトは僕っていう最大の武器をもっと都合よく上手に使うべきだよ」

なんて、話しを勝手に進めながら、箒をその手に呼び出すと颯爽と跨り始めてしまうのだ。

それには流石にソルトの思考も慌てて機能するという物。

一緒に行く気満々である様子の六花の姿には『いやいやいや、』と額に手を添え待ったの手までかざしたというのに。

「待っ…」

「行っくよ~」

「っ…!!!?」

まさに、聞く耳持たず。

ソルトが意見を言い切るより早く、待ったをかけた筈の腕がグイッと引かれたかと思うと六花の身体にぶつかり。

無意識にも六花の身体に腕を巻きつけてしまうと、次の瞬間にはソルトの足は地面から離れて馴染みのない浮遊感を得たのである。