そんな笑顔に『あれ?俺の聞き違いだったかな?』なんて自身への疑惑が強まった刹那。
「人知を超えると謳われている百夜殿の技法ですよ?盗めるものなら盗みたいと思うのは研究者として当然の性と欲求と言うものでしょう」
「時雨様!?」
「こいつはこういう男なんだよリっ君。間の抜けた笑顔と空気に皆面白い程絆されて騙されるけど。虎視眈々、シレッと人の足元を掬おうとする奴なんだ」
「あはは、困った事に百夜殿は騙されてくれないんですけどね」
「狸め」
「お褒め頂き恐縮です」
最早突っ込む言葉も浮かぶまい。
ソルトの本能が言うのだ。
悪戯にこの二人の関係に立ち入っちゃならねえ。と。
時雨が狸と言うならば百夜は狐。
狸と狐の化かし合いの様なものに巻き込まれては身はもっても精神は持たぬ!!
そんな防衛本能働けば下手な口挟みもする事なく、寧ろ気配をこれでもかと消して微笑ましくない笑顔の対峙の行方を見守っていたソルトであったが。
「まあ、とにかくだ。……邪魔」
「へっ?」
「おや、」
ほんの一瞬だ。
百夜の結論の様な一言が告げられたかと思うと次の瞬間にはソルトの視界がガラリと変わる。
それは並び立つ時雨もまた同じ境遇らしく、
「あはは、締め出されてしまいましたね」
そんな現状把握を和やかに零すのだ。



