終われる筈がない。
ましてや手さぐりもいいとこに特攻する立場となってしまったのだ。
「まあ……こういう時の高給取りだ。今まで良い思いしてた分の清算時ってやつか。……しゃあねえわな」
こんな時も訪れるだろうと覚悟はあった。
そんな時の為に与えられた自由や賞与は謳歌していたつもりだ。
悔いのないように。
いつ死んでもいいように。
そうしてたつもりが。
「……今死んだら成仏できねえな、俺」
仕方ないと理屈では分かってるのに、諦め悪く脳裏に浮かぶのは六花の姿なのだ。
それには張り詰めていた糸も緩んで参ったと口元が弧を描く程。
参った。
あいつとまだ居たい。
一緒にしたい事もありすぎる。
してやりたい事もまだまだあるじゃねえか。
もっと頭を撫でてやりたい。
手を繋いで恋人らしく甘やかす事も。
好きだと音にして響かせる事も。
ああ、ヤバイな。
「俺、まともにあいつの顔見てねえじゃん」
衝動的に駆け出してきたけど。
あいつ、どんな顔してた?
あれが最後かもしれねえのに。
もう会えねえかもしれねえのに。
〝大切なのはいつだってその瞬間なんですよ〟
「………」
〝次なんてあてにしてはいけない。次の瞬間なんて物があるとは限らない〟
本当ですね、時雨様。
次の瞬間なんてものは当たり前にあるようで実に儚い。
「フッ…ここで死んだら呪われるな。…悲しむより早く強く…強烈に恨んで呪うんだろうな…」
きっと愛情の分だけ。



