「……違う」
「……えっ?」
「魔女だから危険なんじゃねえよ。危険な思考の奴が魔女だったってだけだ。……お前と一緒にすんな」
思いがけない否定の言葉は頭を撫でる感触と共に。
えっ?と覗き上げたソルトの視線は六花には向いておらず、険しい双眸が追うのはひたすらなる現状把握だろう。
それでも発せられた言葉と力強くも優しい手の感触ばかりはまっすぐに六花に向けられているのだ。
魔女だから悪なのではないのだと。
少なくとも、六花は違うのだとソルトは知っているし、信じている。
それが暗に伝わる一瞬の掛け合い。
視線が絡まぬとも十分にソルトの信愛は伝わるのだ。
別に自分が魔女である事に悲観もしてないのに。と、心の中で突っ込みを入れつつもだ。
感極まった感情は素直に六花の口角を上げてしまうのだ。
それでも、そんな六花の歓喜の表情にまでは流石に意識が回らぬソルトの心境。
一通り意識を配り聴覚を研ぎ澄ませた限りでは人命に急を要する対象は居ないらしい。
そうとくれば自分が最優先すべきは本来の職務である魔女狩りであろう。
今回は本当の意味での狩り。
説得の猶予などなく現行犯の。
幸い、魔女の気配は一定の場所から動きを見せていない。と、ソルトが改めて五感を研ぎ澄ませた刹那。
再び微弱に振動する地面と遠くで響く畏怖の叫びと。



