今まさに起きた災害の様な事など事件記録の中でも数える程であろう。
六花の悪戯とはまるで違う、明らかなる悪意の行為。
人命に害為す悪意。
「魔女が忌み嫌われるわけだ」
視界に収める光景にソルトが静かなる憤りを沸々とさせていた刹那。
腕の中でモゾりと動きを見せた六花が、惨状となり果てた街中をぐるりと見渡すと溜め息交じりにそんな結論を呟く。
同じ魔女という人種のなし得た行為。
魔女と言うだけで何故忌み嫌われるのだろうか?と常々考えていたが、この光景を目の当たりにしてしまえば魔女に向けられる危険視も頷ける。
自分の中には無い危険思考ではあるが、確かに自分も同じ事をしようと思えば出来るだろう。
出来てしまうのだ。
それを分かっているようで分かっていなかったのだと、この惨状の中に身を置いてようやく理解した気がする。
何故、ソルトの様な神父という存在がいるのかも。
必要であるのかも。
「こんな破壊欲求、僕には無い思考だけど……。確かに危険だね。魔女って奴は」
危険分子である事は否めない。
意思一つであっさりと街一つ崩壊させる力を持ち合わせているのだから。
とは言え、今更持ち得た能力に悲観や畏怖などを抱いての発言ではないのだ。
客観的に捉えて漠然と危険だと理解した。
そんな六花の一言であったのだが。



