我儘という名の極上の口説き文句。
ソルトにそんなつもりはなくとも六花にとっては最高の。
あの仕事には生真面目なソルトが仕事より自分へと執着を置いてくれているのだ。
嬉しくない筈がない。
それどころか今更逆に聞き分け悪くどこにも行かせたくないと思ってしまうくらいに。
「はぁ…ソルトって本当に僕の心を翻弄するのが上手すぎるよ」
「あっ?何が?どこが?寧ろ翻弄されてんのは俺の方じゃねえか?」
「そういう無自覚なとこも好き」
「っ…ほら見ろ。今まさにじゃねえか」
「ソルト、」
「んあっ?」
「僕、嫉妬深いんだ」
「……はぁっ?ちょっ…何の話…」
「他の魔女の事にも意識向けながら中途半端に僕に触んなって事」
「っ……」
「僕を抱きしめるなら、僕だけを見て考えて感じてくれてじゃなきゃ……呪っちゃうよ?」
何の話なんだと困惑したのなど一瞬。
すぐに捕捉された脅し文句に呆気に取られたことさえも一瞬。
早く終わらせて自分だけに集中しろ。なんて脅しの意図に気がついてしまえば呪うなんて響きに畏怖する事もなく。
寧ろ、
「っ…お前って…いい女な」
「そう?単なる嫉妬深い魔女なだけだけど?」
「……凄えキスしてえ」
欲情したとかそんな感覚とは違うのだ。
ただただ、自分を無理せず理解して受け止めてくれる六花に愛おしさがこみ上げての欲求。



