自分の立場くらいは分かっている。
こういう時の高給取りの職務である事も。
緊急時には自分の都合など押し通せるはずもないのだ。
それでも今日という日ばかりは自分のこの職に怨みを持って向かう事になる。
すでに自分の鼻が魔女の居場所も距離も嗅ぎ分けている。
蓮華からこれ以上の情報も不必要で、舌打ちと同時に雑に通話を切ると意識の切り替え。
浮れて楽しかった意識から仕事モードの緊張感へ。
それでも完全に切り替わる前にと、視線を動かしたの先は当然隣でデートの続きを待っていた六花にだ。
ソルトが視線を向けた時にはすでに六花の双眸はソルトに向いていて。
無表情で見つめ上げてくる水色の眼差しは会話こそ聞いておらずとも状況は把握しているのだ。
把握して納得しているような聞き分けの言い無表情。
ソルトが事情を説明し謝罪を口にするより早くそんな理解を示されたのだ。
その無表情に卑屈な感情なんて見えない。
実際六花もそんな感情を抱いていなく。
仕事なら仕方ないよね。と単純に納得しての無表情であって。
素直に『いってらっしゃい』と送り出す気満々であったのに。
「っ……」
「…………行きたくねえ」
「……ソル…ト?」
「……俺が行きたくねえってのに……そんな聞き分けのいい顔してんじゃねえよ」
「っ~~~」
聞き分けが無かったのは寧ろソルトの方。
普段は呆れる程仕事馬鹿であるソルトの方。
最後の最後まで悪あがきの様に六花を抱き寄せるといつもの真逆。
子供の様な不満と我儘を六花の耳に吹きこんできたのだ。



